やっちゃんのあぐだもぐだ
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相馬地方の万葉集
令和元年の5月、皆さんはどんな過ごし方をされたのでしょう。私は、連休前後に旅館を抜け出し、北限の万葉集の地『陸奥』のすべての歌碑を踏破致しました。今回はその中でも2度訪問してようやく見学できた相馬地区の万葉集歌碑をご紹介いたします。
 一つは松川浦の海岸端にあり2011年の大津波の襲われながら無事にパークゴルフ場駐車場の横に海を見ながら立っています。

 麻都が浦に さわゑうち立ち ま人言 思ほすなもろ 我が思ほすうも
  (巻第十四 相聞歌 3574、昭和50年建立 [解釈]麻都が浦(松川浦)に波のざわめきがしきりに聞こえるが、あの人は、そんなざわついた世間の噂を気にしておられたようだよ。私が気にしているように)波のざわめきと歌人のささやきが同時に聞こえそうな場所です。

南相馬市鹿島の桜平公園は『みちのく真野万葉植物園』との名称で整備され、笠女郎が大伴家持に送った歌が立てられています。

みちのくの真野の草(かや)原遠けれど 面影にして 見ゆるというものを
(巻第三 譬楡歌 399 笠女郎、昭和35年建立 〔解釈〕みちのくの真野のかや原は遠いところだと聞いていますが、そんなに遠い草原でも目の前にその姿が浮かびますのに、近くにすむ家持に何故に会えないのでしょう)
大震災の時、海岸から国道6号線までは津波に襲われており、この小高い公園は無事でしたが、笠女郎の歌碑は公園の樹木に隠れ、見つけにくくなっております。

2度の訪問でようやく巡り合えたのが『真吹郷』の歌碑で、平成7年の建立です。

 真金吹く 丹生の真朱(まそほ)の色に出て 言はなくのみぞ 吾が恋ふらくは
(巻第十四 3582、〔解釈〕私はあなたを深く恋い慕っているのですが、他人には知られないように、顔を出さないようにしているだけです)
 原町火力発電所の敷地内にあり、隣接して金沢遺跡保存館の出口に立てられています。古代の製鉄炉(タタラ)が123基と木炭釜149基、古代の住居跡なども多く見つかった場所です。火力発電所の南東側には砂浜が広がり、南側の砂浜は格好のサーフィンサイトでもあります。砂鉄を運び上げ、製鉄炉で鉄を作る古代の一大製鉄所跡であったのです。ここで作られた大量の鉄は農具や刀、鎧などになり、陸奥の国府多賀城付近に集められ、蝦夷地を大和朝廷の国へ組み入れる大事な役割を果たしたところであったのでしょう。
 写真は火力発電所内の古代のタタラです。見学用の通路脇には重い鉄磋が敷き詰められ、長さ15mほどの登り釜式の炭窯も発掘展示され、古代の一大製鉄コンビナートを理解でき、一見の価値ありです。             福島の万葉集、次号に続く